RER Agency不動産事業部 業務課です。
前回のブログで当社の社内インフラについて少し触れたところ、非常に多くの反響と、ネットワークに詳しい方々からマニアックなご質問を多数いただきました。
特に多かったのが、「TP-LinkのER8411で10GのIPoE(MAP-E)を組むと、メーカーの公式仕様でVPN機能が無効化されるはずでは? どうやってグループ内ネットワークと両立させているのか?」という鋭いご指摘です。
結論から申し上げますと、ER8411単体で力技で解決しようとすると、その仕様の壁(IPoEファームウェアの制限事項)にぶつかります。そのため、このルーターをOC-200の配下に入れることはできません。しかし、ネットワークの「組み合わせ」を緻密に設計することで、10Gのスピードと確実なVPNを100%両立させています。
今回は、RER不動産荻窪本店が試行錯誤の末にたどり着いた、インフラ設計の裏側を詳しく解説します。
10G IPoEとVPNを両立させる「HGW+固定IP+DMZ」の仕組み
ER8411がIPoE(MAP-E)設定時にVPNを禁止しているのは、10Gという膨大なデータを処理しながら、日本固有の特殊なカプセル化(MAP-Eなど)とVPNの暗号化を同時にこなすと、ルーターの頭脳(CPU)がパンクしてしまうからです。
VPN機能が無効化されることを完全に回避し、10G IPoEのスピードとVPNを確実に両立させるために当社が設計したのが、「ひかり電話(HGW)+プロバイダ(固定IP)+DMZ」の構成です。ポイントは3点あります。
① IPoEの「面倒な通信」をHGWに押し付ける
今回の構成では、「IPoEの接続処理」はすべてNTTの10G HGW(ホームゲートウェイ)が担当します。ER8411自身は「ただの静的なIPv4通信」としてHGWからネットを分けてもらうだけなので、ルーターに余計な負荷がかからず、VPN機能が一切無効化(排他制限)されません。
② 「DMZ設定」でVPNパケットを素通りさせる
HGWの下にER8411を繋ぐと「二重ルーターになって外部からのVPNが遮断されるのでは?」という懸念がありますが、これはHGW側の「DMZホスト設定」で解決しています。
インターネット側から届く各アパートの防犯カメラの映像パケットや、本部のVPNパケット(UDP 500/4500など)は、HGWをそのままスルーしてER8411へ100%丸投げ(全転送)されます。そのため、ER8411が回線の最前線にいるのと同じ状態で安全にVPNが成立します。
③ 特定のプロバイダによる「ポート全解放」
通常の10G IPoE(動的IP)は、1つのIPアドレスを他のユーザーと分け合って使うため、利用できるポート番号が制限され、VPNに必要なポート(UDP 500/4500)が使えません。
しかし、当社が採用している特定のプロバイダは、10G IPoEの高速ルートを通りながら、RER不動産専用のIPv4アドレスと、すべてのポート(0〜65535番)を丸ごと1本占有させてくれます。これにより、IPsec VPNに必要な通信が何一つ邪魔されずに届く環境を作っています。
「DDNS」ではダメで、「固定IP」が必要なのか?
ネットワークに少し詳しい方だと、「実家のルーターにはDDNS(変動するIPアドレスを自動で追いかける仕組み)を設定して外から繋いでいるよ」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今回の「10G IPoE回線で会社のVPNを組む」というケースでは、DDNSでは絶対にうまくいきません。必ずプロバイダの「固定IPオプション」が必要になります。
その理由は、一般の10G IPoE(動的IP)の仕組みにあります。
実際、導入を検討される方はご相談ください。
物理的な罠を回避する:ER8411のSFPポートとハブの配線設計
ここからは物理的な配線の話です。ER8411はすべてのポートが10G対応というわけではありません。ここを理解せずに組むと、せっかくの10G回線が宝の持ち腐れになります。
気を付けなければいけないのが、一般的なLANケーブルの先である「RJ45ジャック」のままでは10Gを活用できない点です。ルーターのRJ45ポートにそのまま挿すと1Gの通信になってしまいます。
そのため、HGWからER8411へ接続する際には、SFPポートに適合する「SFP+モジュール(RJ45変換ジャック)」を別途購入して接続しています。
また、ER8411から10Gで出力できるSFPポートは実質1個です。SFPポートは計3つありますが、内訳は以下のようになっています。
・1つ目:HGWからの入力用(10G)
・2つ目:スイッチングハブへの出力用(10G)
・3つ目:1G専用ポート
つまり、ルーターから10Gで外に出せるルートは1本だけです。そこで当社は、追加で10G対応のネットワークハブ「DS1008X」を購入し、ルーターからの10G出力をこのハブに繋ぐことで、社内の10Gラインを拡張しています。
thunderboltで5Gまで速度が出るRJ45ジャックうぃ使用して通信テストでここまでの実行速度が確認できました。普段使いではここまでの速度はいらないですけどね。。。ただ、今後オーナー様のアパートで10Gなど導入する可能性もあるので。。。
はまる前に「配線図」を作り、テプラで管理する
ER8411の本体にあるRJ45ポートは1Gです。そのため、事前に綿密なネットワーク配線図を作っておかないと、現場で混乱してしまいます。当社では、社内の通信インフラを以下のように明確に仕分けて配線しています。
10Gで通信したいLANの数:PCやメインのNASなど、大容量データを瞬時に動かしたいコアシステム。
1Gで十分な回線(PoEを使用するもの):防犯カメラや、クラウドPBXを利用するIP電話機など、電力供給が必要で通信帯域自体は1Gで事足りる機器。
1Gで十分な回線:コピー機(複合機)や有線放送など、高速通信を必要としない機器。
これらをDS1008X(10Gハブ)とER8411の各ポートへ正確に振り分けて接続しています。長期間安定して運用するため、またメンテナンス時に迷わないためにも、ハブに差し込むLANケーブルにはすべて「テプラで番号を振っておく」のが非常におすすめです。
ここまで、コストやネットワーク構成など、理想的なお話をしてきましたが、皆さまが一番気になる「リアル」な現場の写真をお見せします。「……配線、めちゃくちゃごちゃごちゃじゃないか!」
そう思われたことでしょう。その感覚は正しいです。
木目の美しい壁に、スタイリッシュな機器が並んでいる……と思いきや、中央にはとてつもないボリュームの青いLANケーブルが渦を巻いています。
この「ごちゃごちゃ」には、実は理由があります。
1. 10Gハブ(DS1008X)の追加とポート分配
前述の通り、ER8411単体では10Gの出力ポートが足りないため、10Gスイッチングハブ「DS1008X」を追加しています。
これにより、ルーターからの10G出力をこのハブに入れ、そこからさらに10Gが必要な社内機器(NASやコアPC)へ分配する必要があります。
写真の機器の下段がER8411、その上がDS1008Xです。つまり、ルーターとハブを10Gで繋ぐ(写真中央)だけでなく、そこからハブを経由してすべての10G機器へ配線しているため、必然的に中央にケーブルが集中します。これが「青い渦」の正体です。
2. ポートごとの「用途仕分け」と配線図
このごちゃごちゃをさらに助長しているのが、機器ごとの通信帯域(10Gか1Gか)の徹底的な仕分けです。
ER8411のRJ45ポートは1G専用、DS1008Xのポートは10G専用です。
・1Gで十分な機器(防犯カメラ、クラウドPBXなど):ER8411へ
・10Gが必要な機器(データサーバーなど):DS1008Xへ
これを、事前に作成した綿密な配線図に従って、どのポートにどのケーブルを挿すか、一本一本パズルのように管理しながら配線しています。
3. 「テプラ」による番号管理の裏側
長期間安定して運用するため、そしてトラブル時にどの機器のケーブルかを即座に特定するために、ハブに差し込むすべてのLANケーブルにはテプラで番号を振って管理しています。
写真を見ると、ケーブル中央の束に隠れていますが、一本一本に白いタグが見えるのが分かりますでしょうか?これがテプラです。
この「ごちゃごちゃ」に見える配線は、実はすべて番号で管理された「緻密に設計された複雑さ」なのです。
見た目は決してスマートではありませんが、この配線こそが、RER不動産荻窪本店の超高速・安全な10GVPNインフラを支えている、私たちの工夫と努力の結晶と言えます。
OC-200の支配下に置けない「もどかしさ」と、それを超えるコストメリット
TP-Link製品の最大の強みといえば、コントローラーである「OC-200」を使ってネットワーク全体を一元管理(Omada SDN)できる点にあります。それだけに、今回の「HGW+DMZ」構成をとることで、肝心のER8411をOC-200の支配下に置けなくなってしまうのは、正直なところ非常に残念なポイントです。
これこそが、日本の「IPoE(MAP-E)」という独自規格のインフラ事情に対して、グローバル仕様で作られている安価で高性能な海外製品がそのまま100%の機能を発揮できないという、国内のネットワーク構築におけるもどかしい壁と言えます。
そのため、「絶対にOC-200でルーターまで一括管理したい」という環境には向かないかもしれません。しかし、「ルーター単体の管理で割り切れる」「OC-200がなくても問題ない」という人であれば、ER8411は10G VPNを構築する上で間違いなく強力な選択肢になります。
当社としても、グループ内のVPNルーターをすべてTP-Link製品で統一している中で、「この構成なら10Gで確実にVPNが組める」ということが分かったため、ER8411の導入に踏み切りました。
驚異のコストパフォーマンス:YAMAHA RTX1300との比較
10G対応の法人向けルーターを選定する際、国内の定番として必ず名前が挙がるのがYAMAHA(ヤマハ)の「RTX1300」です。
確かにYAMAHAは日本の回線事情に完璧にローカライズされており、RJ45で一部10G通信がそのまま行えるなど非常に優秀ですが、価格帯が大きく異なります。この記事を書いている現時点で、それぞれの市場価格を比較するとその差は一目瞭然です。
その差は約4倍です。いくら10G化が必要とはいえ、中小企業や複数拠点を構える不動産会社にとって、ルーター1台に25万円を投じるのは容易ではありません。YAMAHAは確実ですが、やはり高価です。
TP-Linkであれば、SFP+モジュールの追加購入や配線図の事前設計といった「運用の工夫」さえしっかり行えば、約4分の1のコストで10G超高速VPNインフラが手に入ります。この圧倒的なコストメリットこそが、多少の制限を受け入れてでもER8411を選ぶ最大の理由です。
RER Agency不動産事業部 業務課がお手伝いできること
このように、海外製品(TP-Linkなど)は日本の回線仕様に合わせた正しい設計・運用の工夫を行うことで、性能を一切妥協することなく、初期費用を爆発的に安価に抑えることが可能です。
RER Agency不動産事業部 業務課では、自社オフィスのネットワーク構築で培った高度なノウハウを活かし、皆さまからの多岐にわたるネットワークのご相談を承っています。
・アパート・マンション等の無料インターネット(Wi-Fi)設備設置
・快適で安全な法人事務所のネットワーク・VPN構築
・遠隔から24時間監視可能なアパートの防犯カメラシステム導入
「高額な国産機で見積もりを出されて困っている」「安価な海外製品を使ってコストを抑えたいが、設定や仕様の壁がわからない」といったお悩みがあれば、設計から実際の配線管理までトータルでサポートいたします。
ネットワークカメラなど自社でできると便利
RER不動産荻窪本店のネットワークは、単に高スペックな機器を並べただけのものではありません。
・日本の回線仕様(IPoE)の制限をクリアする「HGW+DMZホスト設定」
・10Gの速度と安全性を両立させる特定プロバイダの「ポート全解放(固定IP)」
・SFP+のポート制限を補う「DS1008X」の追加と緻密な配線管理
・YAMAHA RTX1300に対して、約4分の1という圧倒的コストパフォーマンスの追求
海外製品の「仕様の壁」を知識と設計で乗り越え、コストを最小限に抑えながらも、実務に最適な10G超高速・安全なVPNインフラを構築しています。
オフィス内のDX化、そして何よりお客様へのスピーディーな情報提供やオーナー様への付加価値提案を支えるために、当社の業務課はこれからも通信環境の最適化に徹底的にこだわっていきます。
アパートオーナー様や企業様で、インフラ構築・コストダウンについてさらに詳しく知りたい方、同様の課題でお悩みのことがございましたら、いつでも業務課までお気軽にお声がけください。