ゴールデンウィークが明け、いよいよレオ第5ビルの解体工事がスタートしました。
ユニットバスなどをすべて撤去し、有効面積を最大化した開放的な「カフェ&スタジオ」を創り上げるためのスケルトン化。職人たちの手によって威勢よく壁が壊され、順調に進むかと思われたその時、リフォームやリノベーションの現場では最も恐ろしい「あのトラブル」が私たちを襲いました。
施工を担当する秀栄建設の工事部長から緊迫した連絡が入り、急いで現場へ向かうと、そこには誰も予想していなかった光景がありました。解体された壁の奥から、事前の設計図面には一切記載されていない「鉄骨の柱」がドンと現れたのです。
私たちが描いていた図面は、この柱がない前提でギリギリのスペース計算をしていました。これがあるだけで、苦労して決めたカウンターの位置やスタッフの執務スペース、動線計画のすべてが狂ってしまいます。現場には一気に緊張が走りました。
ここで不動産のプロとしてシビアに考えなければならないのが、退去時の「原状回復」です。
賃貸物件である以上、今の理想を追い求めるだけでなく、将来引き渡すときのコストも最小限に抑える解体・内装計画でなければなりません。この「謎の柱」をいかに傷つけず、かつ空間のデザインとしてどう落とし込むか、現場は大慌てで再設計に追われることになりました。
現場のトラブルと並行して、内装の仕様決定も待ったなしの状況でした。
大工仕事が終わる前までに、以下の項目をすべて「5月20日」までに決定しなければなりません。
・建具(ドアや枠など)の色
・壁紙(クロス)の選定
・タイルカーペットの選定とカラーイメージ
日頃から住宅用の内装は見慣れているものの、今回は「気軽に立ち寄れるお洒落なカフェ&スタジオ」というコンセプトです。会社の顔となる1号店にふさわしいイメージを具現化するため、極限の集中力でセレクトを進めました。
なぜ、ここまで決定を急いだのか。それには世界情勢の影がありました。
当時、アメリカとイランを巡る海峡問題などの地政学的リスクにより、石油化学製品の基礎原料である「ナフサ」の供給目詰まりや流通の混乱が懸念されていました。
建材やクロス、タイルカーペットなどの内装資材は、こうした世界情勢の煽りを受けて「注文してもモノが入ってこない」という建材不足に直結するリスクを孕んでいます。
「ギリギリに発注したのでは、オープンに間に合わなくなる」
そう確信したからこそ、リスクを先回りして「早めに決めて、早めに発注する」という鉄則を徹底しました。
目に見える内装デザインだけでなく、店舗の生命線であるインフラの配置も同時に確定させる必要がありました。
・LAN配線のルートとポートの位置
・最適な業務効率とセキュリティを考慮した電源の配置
これらは大工仕事が進んで壁や床が塞がれてしまう前に、寸分の狂いもなく位置を決定しなければ後からの変更が効きません。
図面にない柱への対応、世界情勢を睨んだスピード発注、そして緻密な配線計画。すべての課題が「5月20日」というタイムリミットに向けて一気に押し寄せる、まさにプロジェクト最大の山場を迎えていました。