相続税対策としての不動産投資は、メリットがある反面、リスクもあります。どんなリスクがあるのかを知っていれば、リスクを回避したり、最小限に止めたりすることは可能です。4章では、リスクを回避し、成功に導くためのポイントをご紹介いたします。
相続税対策としての不動産投資は、メリットがある反面、リスクもあります。どんなリスクがあるのかを知っていれば、リスクを回避したり、最小限に止めたりすることは可能です。4章では、リスクを回避し、成功に導くためのポイントをご紹介いたします。
相続財産を受ける権利を持つ人を相続人というのに対し、相続財産を遺して亡くなった人のことを被相続人といいます。
相続は、財産を持っている人が亡くなった時点でスタートしますが、人の命がいつ閉じるのかは誰にもわかりません。そのため、相続税対策としての不動産投資は、被相続人になりうる人が生前に行っておく必要があります。
ところで、相続税対策として不動産投資をした場合、相続する人は不動産を受け継ぐことになります。例えば収益が期待できるアパートに投資して相続税額が低く抑えられたとしても、もし相続人となる人がアパート経営に全く興味がなかったとしたら、逆に重荷になってしまうこともあります。
本来、相続税対策としての不動産投資は、財産を受け継ぐ人によかれと思って行われるものであるはずです。であればこそ、被相続人になりうる人は、相続人になる予定の人にしっかり相談をし、了解を得ながら、二人三脚で進めていくことが大切です。
被相続人と相続人の合意の上で、投資する不動産を決め、契約すれば、相続人も納得して不動産を相続できるというものです。しかしここで終わりではありません。契約後に必ず行っていただきたいことがあります。それは家族信託です。
家族信託とは、資産を持つ人が、預貯金や不動産を信頼できる家族に託し、家族内で管理・処分できるようにする制度のことです。
例えば、相続税対策として父親が娘のためにアパートを建設したとしましょう。当初父親はしっかりしていましたが、その後認知症になってしまいました。アパートは父親名義ですが、父親にはもはや認知能力はありません。
そして、娘はそのアパートをゆくゆく相続することになっていますが、所有者である父親は健在のため、娘に管理をする権利はありません。クロスが破れた場合などもその都度、裁判所に管理権を請求しなければ、張り替えをすることさえできないのです。
また、クロスの張り替えといった管理に関わる問題であれば、管理権を請求することができますが、例えば古くなったキッチンを変えるといったリフォームは、利殖行為(利益を生む行為)とみなされ、一切行うことができないのです。
こうした不都合な事態を解消するためにできた新たな制度が、家族信託なのです。人生はいつ何が起こるか予測できないので、被相続人になりうる人の年齢が70代であろうが30代であろうが、年齢に関わらず、不動産を購入した時点で家族信託を組むことを提案します。
ちなみに、成年後見人制度を用いる方法もありますが、被相続人になりうる人の生活のサポートが目的ではなく、財産管理が目的であれば、財産管理においてより柔軟性の高い家族信託がよいでしょう。
そして、もう一つ。なによりも肝心なのが、不動産投資をするからには、投資をする当人が、事業主になるという覚悟を持つことです。
不動産投資は一つのビジネスです。たとえ相続税対策が目的であっても、不動産投資をした段階で、事業主になるのです。万一、甘い話にだまされてしまっても、悪いのは騙された当人です。なぜなら、責任はすべて、事業主にあるからです。
厳しいことを言うようですが、不動産投資をする際は、事業主になるという強い覚悟を持ち、投資をする当人が主体となって判断し、進めていくことが極めて重要です。